G プレス | 2016年11月29日
Gプレス シェイク! Vol.5 記事 (4)

シェイク!Vol.5 長く愛されるコンテンツとは?
藤村忠寿(水曜どうでしょう)
×
佐藤尚之(さとなお)
×
林雄司(デイリーポータルZ)

シェイク!Vol.5 「長く愛されるコンテンツとは?」のトークセッションの模様の4回目。
今回は、真面目に皆さんが観客からの質問に答える模様をお届けします!

続々と質問が集まりました!

藤村
あと残り30分というところで、そろそろ質問タイムに入ろうと思います。


観客A
企業で採用の担当をしておりまして、オウンドメディア的なことをしたいと思っています。ところが、広報に内容のチェックをお願いすると誰でも作ることができる文面に変えちゃうんです。『デイリーポータルZ』では広報や社内の誰かに文面を変えられたりとか、そういうことが起きることはないのでしょうか? もしあればどうやってそれを乗り越えているのかをお聞きしたいです。


広報からのチェックはないですが、いつの間にか「何をしてもあそこはしょうがないか」みたいなことになってますね。


藤村
「あそこはしょうがないか」って思われるまでにどれくらいかかりました?


2~3年くらいですね。


佐藤
「あそことかあいつはしょうがない」っていうのはサラリーマンにとって一番良い立ち位置ですよね。 僕の場合は「あいつは夜はメシ食べに行っちゃっていないからしょうがない」ってレッテルを貼ってもらうよう努力しました(笑) すると「佐藤は夜はいないから打合せはできない」って勝手に思ってくれて誰も会議に呼びに来なくなる。楽ですよね。


藤村
僕は社内のメールすら読んでませんからね。そうすると会社からのメールが一切なくなる。会議ですって言われても知らない。メール見てないんだから 。


観客A
非常に参考になりました(笑)


藤村
次の方どうぞ。


観客B
藤村さんへの質問です。先ほど「ちゃんと作ろうとは思ってるんですよね」とおっしゃっていたその「ちゃんと」って何ですか? 藤村さんにとってもちゃんとの定義を教えてください。


佐藤
そんなちゃんと考えていないと思う(笑)


藤村
そう言ってしまえばそうなんだけど。しっかりしてるっていう意味ではなくて「テレビとしてちゃんと見える」ってことが大事。

例えば、『水曜どうでしょう』の場合は予告編を重要視していました。とにかく大きく見せるんです。「アメリカ横断!」とか「ヨーロッパ横断!」とか。そういう他より力入れてる感というか外側や見栄えを大きくガーンってやっておいた上で、中を体たらくにすると、この落差で人がどんどん落ちていく。あの予告編は罠なんだよね。

それに、最初からふざけた風に見せちゃうとふざけた奴しか集まらない。「ちゃんとしてる」っていうのは最初からふざけてる風には見られたくないという意味ですね。


うちもそうしよう(笑)


藤村
いやデイリーポータルはちゃんとしようとしているでしょう。文面もそんなふざけてないし一応アカデミックな印象を受ける。


文面はかっちりするようにしています。顔文字禁止ですし、ほとんど「だ・である」体ですね。そっちの方がちゃんと見えるから。あと無意味にグラフを入れるとかですね(笑)


藤村
『水曜どうでしょう』も無意味に現在地や目的地の載った地図を見せるようにしています。そうやるとアカデミック感が出るでしょ。 


佐藤
あと予算がある感が出るのも大事ですよね。


藤村
予算感出すみたいな。あるある(笑) 頑張ってるな感は大事です。あと何かありますか?


観客C
私の推測なんですが、企業の中で新しいことをやろうとすると反対勢力が出てくると思います。それに、組織内にいながらどう立ち向かっていくかっていうそのヒントを今日は持って帰りたいなと思っています。


『デイリーポータルZ』の風向きが変わったのがニフティのイベントでコーナーを出したときに2〜300人が集まりました、それから『デイリーポータルZ』に対する社内の見る目が変わりましたね。ニフティはインターネットの会社ではあるんですけれど 生身に弱いんですよ。「PVが5万です10万です」って言っても数字ですからそこからは何も伝わらなくて。 


藤村
「俺がやっているイベントはこんなに人が熱く集まっているんだぞ!」みたいなね。


藤村
『水曜どうでしょう』でも、視聴率の良い悪いはそこまで効果はないですね。最初にやったイベントで渋滞を起こすくらい人が来すぎてしまったことがありましたが、そういうのを見せたことが一番効き目がありますね。

何が言いたいかというと、実績を残さない限りやりにくいままです。あとはその実績の残し方だよね。林さんの場合は2〜300人の客を効果的に社内の人間に見せた。視聴率を10%、20%取ったことが実績かっていうと実はそうではないということです。僕の場合はイベントで人が集まったことが会社ではよく効くなって思います。

後はもはや会社に立ち向かわないということだよね。会社に何か言われた時にも「はいはい」って言って会社から許可は取らないっていう。

例えば、テレビの中の表現として水曜どうでしょうは結構ギリギリなことをやっていますが、そういうときに「これはなるべくカットした方がいいんじゃないの」って言われる。そこでも「分かりました。カットします」って言っておいて実際はカットしない(笑) 「お前あれカットしたよな?」って聞かれて「はい、カットしました」って答えておいてやっぱりカットしない。そうすると言葉が通じないって思われる。そういうやつに理屈で言ってもしょうがないでしょ。そうすると人間諦めるんだよ。これは本当です(笑)


イベント中だけどメモしたいくらい大事なことですね(笑) 僕も朝は会社に行かないんですけれどとりあえず謝りますね。「すみません。来ようとは思っているんですけれど」って。 でも来ない。普通の顔して午後からいます(笑)


藤村
そういうことを続けているとたまたま朝来たときに褒められる(笑)


そういうブランディングです(笑)


観客D
私は小さなビールメーカーの人間ですが、零細企業としてウェブ動画を作ってみたいと思っています。ただyoutubeに大量の動画が上がっている中で人の心に残るものってどういうものなのかってことがまだまだ分かっていない。そのことをさとなおさんにお聞きしたいです。


佐藤
一番共感されないのはポジショントークだと思います。例えば、震災のときで言えば「こういう事言っちゃいけない」とか「こういうこと言うべき」とか一般に合わせると共感はされないし受けないし、1分間に300時間上がってくる動画の中で人が見てくれることも噂になることもない。それが小さな発信だとしても「個」を出して自分の名前で何かを表現をするような、個人の熱というか臭い脇の下みたいなそういったものが前に出てこないと見てくれないですね。「なあなあ」な関係になれないんです。この人が何かしたらもう一回見に行こうっていう状況にはできない。

そうは言っても一発の大ホームランってのはたまに出る。でも、それって続かないじゃないですか。続かないとすぐ会社名を忘れちゃったりブランドを忘れちゃったりするんで、観てくれている人との関係性をつくるって意味でいうと「個」を出さないとだめですよね。

バラエティでもスターが出てくる番組はたくさんあるけれど、『水曜どうでしょう』は個の臭い部分がたくさん出ているので我々はずっと覚えている。「あ、あの人たちまだやってるわ」みたいな。そういう気持ちになるのは藤村さんの体臭があるからなんです。そういうのがないと観てもらうのはきついかなあと思います。

『デイリーポータルZ』でも林さんの体臭がすごくするもんね・あれはクリエイティブチェックとかそういうチェックじゃないですもんね。体臭チェックですよね(笑)


ライターから平凡な原稿が帰ってくると「もっと余計なこと書いてください」って言いますね。余計なことを多めにした上で削っていく方が面白くなるので。


藤村
例えば、ビールで普通のCMだったら「こんなに冷えています」とか「どれだけ泡の量があるか」とか「これはキレがあってうまい」とかそういうことばっかり言っちゃうような気がするんだけど。あなたの作っているビールでそんな特徴を挙げても注目されるなんて自分だって思っていないでしょう。でも何も分かっていない状態で作ろうとすると普通のCMの側に行っちゃう。なんでそっちに行っちゃうかっていうと、自分が何を伝えたいのか結局明確じゃないから。まずあなたが作っているビールは何がスゴイのか。それは品質でもなんでもなくあなたの想いでもいいんだよね。例えば「俺、実はビールはあんまり好きじゃないんだけど、僕が作ったビールです!」でも良いと思うんだ。そういうのが体臭だと思う。


佐藤
あたふたしているところとかそういうところを出した方がいいんですよね。


観客D
それは計算せずにということ?


藤村
計算せずにです。そのまま動画に出てちょっとビールに対して計算じゃない想いとかそういうことを出しちゃった方が良いと思います。そうすると「こんなやつが広報やってるんだ」とか「こんなやつが制作してるんだ」ってきっと思ってくれる。そういう計算じゃないものが見えたほうが人ってぐっときますよね。


藤村
「結局そしたら味じゃないじゃないか」っていう話になっちゃうんだけれど(笑) でも、そういうところだよね。人がぐっとくるのって。


佐藤
そこから入った上で、飲んでみたら味が美味しかったら最高ですね。


観客E
お三方は普段どういうインプットをされているんですか? 人と会うとか本を読むとか映画見るとか。


インプットは意識しています。でも、自分とはあまり関係のないようなこととぶつかるように意識していますね。会社に行って普通に仕事してるといつも通りのことしか触れないので。ふらふらっとどこかに行くことが多いです。


藤村
それって例えば今の質問に対する答えとして「月に映画は30本は見てるんですよ」とかそういうことではないですね。


佐藤
僕も近いですね。 僕の場合はお勧めや誘いをなるべく断らないようにしています。思ってもみない流れに乗っかるというか。全然自分に合わないなと思ってもなるべく行く。それがインプットみたいなものですね。


藤村
積極的にいろんなところにアンテナを張ってというイメージとは違う?


佐藤
違います。 自分でアンテナを張ってもあまり拡張性がありません。例えば、怪獣が好きだとして怪獣についてのアンテナを張ってても、怪獣についての知識は深くなるけど意外性がない。自分の想像の範囲から出られない感じがある。それが全然違うタイプや見たくもないようなところに行ったときに、自分の中で全然違う掛け算が起きるみたいなことがある。それが起きるように意識しますね。


藤村
ということは新しいものが何か出てきた時に自分からは触れに行かないんですか?


佐藤
行かないです。人に勧められるまで待ちますね。


藤村
僕も全く一緒です。大阪でやったイベントで「いま一番面白いと思うことを挙げてください」って言われたんですけれど思いつかないの。自分でアンテナを広げるつもりがもともとないから。それって面倒くさいじゃないですか。それよりも人が面白いと思ったものを 聞いて、「そんなに面白いの?」って見に行くのが一番です。僕がやっている仕事って人と会って逆に「何か面白いのあった?」って聴く仕事なので。『君の名は。』とか言われなければ絶対に行かなかったけれど娘が良いって言うから行ってみたら面白くて面白くてたまらなくなっちゃった。

でも、こういうことをするためには「この人が言っているんだったら間違いない」みたいなところは大事でしょう?


佐藤
それはもちろん。


藤村
自分で情報集める気なんてないですね。面倒くさいから。


佐藤
情報が多くなりすぎて無理になりましたよね。


藤村
ある程度、3つ4つくらいまでセレクトしてもらわないと(笑) でも、情報なんてそんなもんですよ。


佐藤
そう思います。というか、そろそろ時間みたいです(笑)。


藤村
そうですか。じゃあ、そういうことで(笑) 本日はどうもありがとうございました。


 

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