Gプレス シェイク! Vol.6 記事 (2)

シェイク!Vol.6 どうしたら作れる、面白い企画
伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)
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米光一成(ライター)
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佐藤ねじ(アートディレクター)

シェイク!Vol.6 「どうしたら作れる、面白い企画」のトークセッションの模様2回目は、「王道からあえてズラす考え方・方法」について語り合いました。

王道からあえてズラす考え方

伊藤
自己紹介が終わりましたので、今日のテーマを発表します。最近、テレビは厳しいです。「テレビ東京、いい感じだね」と言われますが全然そんなこと無い。だんだん視聴率が落ちていっている。テレビ離れは深刻です。

そんなときだからこそ面白い番組を作らなくては、と企画を考えるのですがなかなか浮かばないんですね。ほかのテレビ局も同じだとは思いますが、「こんなテレビがあったらおもしろい」と思えるような当たる番組をここで考えたいと思います。来てくださっている良いクリエイターの方々に良い企画を考えてもらって、最終的に「何か良い企画を思いつきましたか?」と聴きますので、それを僕が盗むということです(笑)


佐藤
この話、事前に聴いていなくて、いま振られています(笑)


米光
トークをしている間に考える、ということですね。


伊藤
そうです。「このひと、こんなこと言うんだ」とか「あそこにいる人、面白い顔だな」とかいろいろあるじゃないですか。そういう中からいくつか良いものをピックアップすれば、これだけ凄い方がいるこの場だったら、良い企画が思い浮かぶんじゃないかなと思っています。


米光
ハードルがどんどん上がりますね(笑)


伊藤
でも、例えば、先程の句会の話で言えばルールが面白いじゃないですか。節々に反応できる言葉が出てくると思うので、そこから企画を考えられればと考えています。

はじめますよ。まず「なぜこの仕事を選んだのか?」を聴きたいと思います。はじめに、ねじさんにお聞きしたいのですが観客の皆さんはねじさんの名前の由来を知っていますか? 知らないですよね。ぜひ聴かせてください。


佐藤
僕の大学のときの知り合いでベトナムからの留学生がいて、彼が僕のことを「ねじ」ってずっと呼んでいたんですよ。「なんでねじって呼ぶんだ?」って聴いたら、ねじはベトナム語でやさしいって意味だったんです。「優しいからねじって呼ぶんだ」って言うんです。


伊藤・米光
良い話ですね。

佐藤
でも、それは嘘で、ベトナム語のねじが優しいってのも嘘です(笑) 

というのも、あまり「ねじ」の由来が面白くないのでエピソードを募集していたことがあって、このエピソードはそのときのものです。

本当の由来は、大学時代に仲間たちとそれぞれのあだ名を決めようってなったときに、地元に「ネジの佐藤」という工場があって、そこの看板を見たときに「佐藤」と「ねじ」って組み合わせると「相性が良い!」と偶然そう思って佐藤ねじに決めました。僕の本名はヨシヒコといいます。今でこそ『勇者ヨシヒコ』のお陰で市民権を得た名前ですが、以前はまったく目立たない名前なのでヨシヒコと呼ばれたことがなくて、いつも佐藤と呼ばれていたんです。でも、佐藤ねじと名乗りだしてからは皆がねじって呼んでくれるようになったので、じゃあ「ねじ」でいいやってことになって今に至ります。


伊藤
平凡な名前の「佐藤」と平凡な「ねじ」を合わせたら何か良い、と。では、いまの仕事を選んだ理由についてはどうでしょう?


佐藤
僕はデジタルコンテンツをつくるプランナー・デザイナーなんですが、それになった理由はここが面白そうだったかなという程度のもので特別な理由はないんです。ただ、みんなが当たり前と思っていることをずらすのが好きで、そういうことをやるときにやりやすいのが、いまはデジタルだからそこにいる、という感じです。やりたいことは変な発見をしていくってことを続けていってなるべくそれを多く世に提示していって死ねればいいなと。

例えば、ウェブサイトだったらフッターは一番下のところという定義があるのですが、フッターの向こう側を作ったらどうなるだろうと思って、ゲーム会社との仕事でフッターの下にさらに裏面みたいなものがあるサイトを作りました。そういうニッチなサイトを作るのが好きなんですね。


伊藤
普通、人は当たり前をズラす必要を感じないと思うのですが、どの辺でそういうことを考えるようになったんですか?


佐藤
例えば、オリンピックの開会式・閉会式のパフォーマンスとか、Perfumeのデジタルと融合したパフォーマンスとかがオシャレでメインストリームなものとしてあるじゃないですか。だいたいどの世界にも超一流がいて、その人達と同じ土俵で戦っても勝てると思えない。土俵を変える癖がずっとあって、その癖をデジタルの世界でやるとズラしていくことに繋がっていきました。ウェブの世界ではズラすことをやり続けている人があんまりいないので、それをやり続けていった結果、今の立場にいます。


伊藤
しゃべる名刺」※は印象的ですね。当たり前のものからズラす発想をしたものという意味で。

※ 「しゃべる名刺」はiOSアプリ開発者の堤修一さんのために佐藤ねじさんがデザインした名刺。


佐藤
「◯◯をしゃべらせる」ってなったときに物をしゃべらせるのは「しゃべらせる界」においてはよくあるんです。

伊藤
「しゃべらせる界」ですか(笑)

佐藤
しゃべる名刺は、「名刺をiphoneの上に載せてアプリを起動させると名刺がしゃべる」というシンプルなものです。紙にハイパーリンクがついていてタップすると喋るのですが、名刺界においては紙にハイパーリンクをつけるのはあまりないことなんです。つまり、しゃべらせることより、紙にハイパーリンクをつけることのほうがあたらしい。こういう「◯◯界」みたいなものを想像して、そこで新しいことを探すような感じのことをやっています。

伊藤
僕もズラすという点では近いものがありますね。民放のやらないことをやろうと思っていて、例えば、テレビ欄をバーっと見て、書いていないものをやると大ゴケするかちょっと異彩を放つかのどちらかになるんです。だから、テレビ欄にはない言葉やものを考えるようにしています。ズラすという考え方はこれに近いですね。

米光
実際にそうやって考えることは多いんですか?

伊藤
そうですね。例えば、「すごい面白いな、この番組」と思ったときは、その逆のことを考えます。つまらなくなっちゃうかもしれないですけど、正解が出ているものはやらなくてもいいと思うので、その正解を少しズラす。

例えば、他局ですが、『あいつ今何してる?』※って番組があるじゃないですか。あれは昔で言うと「芸能界仲良し同窓会」みたいな単なる同窓会番組ですよね。あれを今やったらと考えたときにFacebookの「今、何してる?」に着眼したことで生まれた番組なんだと思います。時代とともに言葉や仕組みを変えて焼き直している。これもズラすということですよね。

※ テレビ朝日にて、2015年10月11日(10日深夜)より放送されているドキュメントバラエティ番組(wikipedia「あいつ今何してる?」より


米光
お二人の本を読んで思ったことでもあるのですが、お二人ともズラすやり方をしていますよね。

僕はゲーム業界的には第2世代なんです。組織にはなってないけど、ひとつ上の先輩がいるわけです。だから、先輩たちがやったような王道があて、そこじゃないことをやるのがおもしろいなと思った。当時は容量がどんどん増えていた時期だったのでマップの広さや敵数の多さを宣伝するゲームが多かったから最初に作った『魔導物語』というRPGはマップが小さくて敵の種類は32種類ぐらいで少ない。少ないことをウリにしました。主人公も男の子のゲームが多かったから、女の子にした勇者みたいにかっこよくないキャラクターです。冒険も世界を救うわけじゃなくて「幼稚園の入学試験」や「しもやけになったからしもやけの薬を探しに行く」みたいな等身大の冒険。そういう意味では佐藤さん・伊藤さんと根本的なところで考え方が近いかと思います。


伊藤
ゲーム業界には興味があったんですか?

米光
元々、ゲーム好きっ子だったので、好きだからやっています。

伊藤
強大な先輩方が作ったものがあった中で、自分は逆の企画を考えていこうと思うようになったキッカケってなんですか?

米光
先輩たちがやってることを真似るより、他のことをいろいろやったほうが面白いってのは、なんだろう。そもそもの性格かもしれない。逆張り、というわけではないけども、やられていないことをやってやろうって感じです。伊藤さんの言うテレビ欄にないことをイチかバチかやるというのと同じですね。

佐藤
『ぷよぷよ』もそういった考えから生まれたんですか?


米光
『テトリス』が大ヒットして、ああいうゲームを作れってなったんですね。でも、僕は『テトリス』が大好きだったからこそ単なる二番煎じはいやだった。

そこで、『テトリス』の自分が好きな要素を全部分解して書きました。「自分でブロックを動かせる」とか「ブロックが揃うと気持ちよく消せる」とか、そうやって考えていくと「俺は『テトリス』のソリッドな感じが好きなんだ」と気づくわけです。

それならばと、テトリスがやっている「ソリッドな感じ」を真反対にして「柔らかいもの」にした。それで『ぷよぷよ』なんです。「ソリッド」という『テトリス』にとっての一番中心のコンセプトを反転させると、すべてを変えていかなかればならない。堅いブロックを柔らかいぷよぷよというキャラにして、ひとりで求道的にプレイするスタイルを対戦にして、キャラがわいわい声出してさわぐ。


伊藤
「落ちゲー」は苦手なのですが、『テトリス』と違って『ぷよぷよ』はゲームオーバーになりそうになっても一気にブロックを消すことが出来るじゃないですか。あの爽快感は良いと思っています。これは『テトリス』のゲームオーバ間近の溺れるような感覚を真反対にしたからこそ生まれたのでしょうか?


米光
『テトリス』は4ブロックで構成されるので、一直線で消える構成だと4段までしか消せないんですよ。でも、『ぷよぷよ』は柔らかいコンセプトにしたのでグネグネ曲げてつなげる消し方ができるので、「連鎖」と呼ばれるような消し方が可能になったから、一気にたくさん消せるようになったんです。

佐藤
僕は『モヤモヤさまぁ〜ず』のコンセプトがすごい好きなんですよ。自分でもターミナル駅でも観光地でもないような駅に降りてただひたすら歩くんです。価値がないと言われているところに価値を見つけることが好きなんですよね。千利休と一緒だと思います。

千利休は価値がないと言われていたところに侘び寂びという価値を見出して「道」にまでした。道を作るって一番すごいことですよね。みうらじゅんさんもそうですし、芸術で言えば赤瀬川原平さんもそうです。そういった系譜の中に『モヤモヤさまぁ〜ず』があると思っています。僕は彼らの意志を受け継いで価値の無いところに価値を見つけ出すことをウェブでやっているんです。

 

「シェイク!」Vol.6 どうしたら作れる、面白い企画