Gプレス シェイク! Vol.6 記事 (4)

シェイク!Vol.6 どうしたら作れる、面白い企画
伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)
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米光一成(ライター)
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佐藤ねじ(アートディレクター)

シェイク!Vol.6 「どうしたら作れる、面白い企画」のトークセッションの模様4回目は、いまどんなことに関心があるのか、またあの大物芸能人の話や、モヤさまのあの話についても語る展開がありました。

いま気になっていることは何ですか?

伊藤

業界で働かれていてそれぞれ課題もあるかと思うのですが、ヒントになるようなことがあれば、言える範囲でお伺いしたいのです。


米光

ゲームを作り続けて30年。コンピューターゲームから入りましたが、いまはアナログゲームが面白いんですよ。カードゲームとかボードゲームとかですね。日々、コンピューターにまみれているのでそこから離れたい人が多いというのと居酒屋などでも楽しめるようになってきたこと、それに印刷技術が進歩して小ロットでオリジナルゲームが作りやすくなったこともあってブームも少し来ているんです。自分もアナログゲームを作りはじめています。


佐藤

アナログゲームは僕も好きでこれから作ろうとしています。ボードゲームはいま広がっていて、アマチュアだけじゃなくて本職のゲームクリエイターの方も作ったりするんですよね。


米光

ゲームマーケットっていうイベントが毎年、大きくなってきています。日本のアナログゲームが本場のドイツで売れていたり賞を取ったりしていて、そういう「これから」なところが面白いんです。

※ 『電源不要ゲーム』のみを対象としたゲームイベントである。東京では年2回春と秋に開催される。第1回開催は2000年4月2日。現在の会場は東京ビッグサイト。(wikipedia「ゲームマーケット」より


伊藤

佐藤さんが最近気になることは何ですか?


佐藤

デジタルのテクノロジーはARやVRなど、どんどん進んでいっています。先端の技術は面白いものがたくさんあるんですけど、使われる場所はPerfume※とか大企業の広告とか意義のあるものなんですね。でも、僕の好きな街のマッサージ屋さんでは最先端のVR技術が使われることは予算が合わないので使われないんです。最先端のテクノロジーは大企業の広告に使われていって、生活に根ざしたような場所からはどんどん分離していっています。だからこそ、僕はもっと個人的な何かにテクノロジーを重ねていくってことに興味があるんです。テクノロジーが使われないような場所にこそテクノロジーを使っていきたい。

例えば、最近、仏師に出会ったんですよ。仏師はデジタルとすごく遠いように思われるんですけど、僕としてはすごく近いように思う。仏師とつながりたいと思うデジタルの人は少ないように思うけど、そこを繋ぐことで空いている土俵をたくさん見つけられるように思うんです。そういう組み合わせのパターンは無限にあると思っていますが、普通のビジネスとして考えたら予算が絶対に合わない。でも、小さい会社としてある種の作品を作るような感じでボランティア的な感じでやっていけば、まだ面白い組み合わせは生まれると思っていて、そういうことに興味があります。

※ Perfumeは毎年3月にアメリカテキサス州オースティン市で行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント「SXSW」などでAR技術を組み合わせたパフォーマンスを行い、世界的な評価を受けている。


米光

まだやられたことがないことなので、最初は予算が合わないかもしれないけど、どんどん広げていけるので可能性があるよ。


佐藤

自分の会社がブルーパドルという名前なんですが、ブルーオーシャンの海に対してパドルは水たまり。ブルーオーシャンはそうそう見つからないですが、小さいブルーオーシャン(=パドル)を見つけるということをしていくと、いつかブルーレイクくらいにはいけるかなと思っています。


伊藤

僕がいま具体的に考えていることは2つあります。テレビ東京は開局して53年間でいままでずっと視聴率が最下位なんですね。そこで、テレビ東京がいままでやっていないことを考えると、王道の番組はやっていないんです。じゃあ他局さんばりに王道をやるかっていうと手法はテレビ東京らしさを考えなくてはいけないんですが、「王道のお笑い」とか「王道の感動モノ」とか、テレビ東京がやる王道に答えを出そうと思っています。

例えば、王道づくりとは違うかもしれないですけど、明石家さんまさんみたいな大物を出すとかですね。実は明石家さんまさんは32年間テレビ東京の番組には一切出ていないんです。ある事件があってそれ以降、出てくれなくなった。テレビ東京には実はそういう人が結構います。でも、僕はMっ気があるんでしょうね。そういうところに触りに行きたくなるんです。普通はタブーなんですけど、さんまさんがテレビ東京に出たらどうなるだろうなって思って謝りに行きました。

正直、さんまさんはテレビ東京に出る必要はないんですよ。でも、さんまさんがテレビ東京と掛け算になったら1+1が2じゃなくて4ぐらいにはなるんじゃないかと思ってやってみたいんです。このようにテレビの大物というかテレビの顔みたいな人がテレビ東京のくだらないことを笑いながらやるっていうことをやってみたいと思っています。

王道づくりということでいうと、先程も話したように長い尺のコントを芸人さんに作ってもらいたいです。レッドカーペットは見やすいかもしれないですけれど、中身は5分のコントのほうが深いし子供が観たときに「凄い。考えられている」と思うでしょう。テレビはそういう長い尺のコントをやらなくなっちゃいましたよね。だからこそ、もう一回さまぁ〜ずや内村光良さんに「やってみましょうよ!」っていうのが僕らの世代の役割かなと思うんです。やってくれない可能性も非常に高いですが(笑)


米光

やるとしたらストレートにやるんですか?


伊藤

「長いコント」って名前でストレートにやります。それくらい歯切れを良くして、嘘をつかない方が良いのかなと。

もう一つやりたいことは、僕も歳を取ってきたから若い人たちに働いてもらおうと思っています。残業問題が世の中を騒がせていますが、だからこそ若い奴らをいかに効率よく働かせるかっていうのが、ちょっと面白くなってきました。昔みたいに3つも4つも掛け持ちでやらせることは出来なくなってきたので、1つの企画を思い切りやらせるようになりましたね。「3年経ったらね」みたいなことではなくて、いまは新入社員にいきなり「これやってみろ」って言う時代かなと思うんです。この間も『モヤモヤさまぁ~ず』で入社後2ヶ月の新人アナウンサーを出演させたんです。なぜかというと2ヶ月しかいないってことと性格悪そうなところが面白かったから(笑)


米光

さまぁ〜ずさんにすごい気に入られてましたけど、性格が悪いんですか?


伊藤

いやぁ、あれは悪いですね(笑) 化けの皮が剥がれるのがこれから楽しみです。


米光

選び方の意地が悪い。観ている方としては面白いですが。


面白いことが生まれる環境づくりとは

佐藤

伊藤さんは自分が計算できないハプニングを生むための箱を作っているような気がします。


伊藤

そうですね。箱というか環境を作ることだけでプロデューサーの仕事は終わるなと思っています。ディレクターやエンジニア、演者さんが思う存分、楽しめるような環境にするということです。ただ、その環境の初期設定としてプロデューサーは人をチョイスする。そこから先は決め切らないようにしています。あれをしなさいこれをしさないということをわざと決めないようにしているんです。特にバラエティ番組ではガチガチに脚本が決められているものが多いのですが、僕の番組では「決めない」。決めないことで苦しんでいるのを見るのが好きです(笑)


米光

視聴者としては贅沢ですよね。決められていない状況で追い込まれたタレントを観ることが出来る。


伊藤

米光さんも枠組みとか箱作りとか、働くことの場所づくりみたいなことは気にされていますよね?


米光

昔はひとりのカリスマみたいな人が引っ張っていくのも良かったと思うんです。いまはそれだけだと色々なことが動かないと思うので、全員がリーダーみたいになるといい。でも、そこの「場」を作る人はいないといけないから、場作りをすることがリーダーの役目かなと。

昔は情報を伝えるにしても同じチームの人に伝えるのに3日くらいかかることもあって「それならリーダーが決めた方が早い」って事になっていたと思うんですけど、いまはインターネットがあるから全員に一気に情報を伝えてベストな場所を目指せば良い。

そういう状況だから、ものの作り方を僕らは変えなきゃいけないのに、技術だけ先行して現場の人間がまだ追いついていないと思っています。


伊藤

お二人は部下や同僚のモチベーションづくりについてはどう考えていますか?


佐藤

よく参考にしているのはナメック星の最長老です。孫悟飯はかなり修行して強くなったけど最長老は「おまえはもっと強くなれる」と言って孫悟飯の頭の上に手を乗せるとパワーアップしてくれる。あれが僕にとっての理想なんですよね。まだお前には可能性があるって言って伸ばすっていう。「まだお前はイケる」って余地を見出すその見出し方が正攻法じゃないところに興味があります。

前の会社のときに変人のディレクターがいたんです。野崎さんって言うんですけど、その人は声が面白くて、作品として「正しいネット用語の発音まとめ」※というサイトを作ったときに協力してもらいました。これって最長老みたいに僕が企画屋としての野崎さんではなくて面白い声の人としての野崎さんを見出したってことだと思うんです。面白いことは特定の誰かではなくて、全員が◯◯界の頂点になれると思うんですよね。そこを引き出していきたいです。

※ 「w」「kwsk」など、インターネットの世界で生まれた用語が、実際にはどんな発音で読むのが正しいのか定義したサイト。企画:佐藤ねじ。実装:藤澤伸。テキスト:長谷川哲士。発音:野崎練太郎。


伊藤
僕はずっとベタなサラリーマンなんですけど、サラリーマンのモチベーションって結構難しくて、サラリーマンってすぐ陰口を叩くんですよ。どの会社もそうだと思うんですけど、意味がないですよね。友達じゃないんだから。一緒に働いているんだからその人の良いところだけを見てあげないと、一緒に働いている意味がない。陰口自体は良いんですよ。陰口エンターテインメントというものがありますから(笑) でもチームってそういうものかなと思っています。

「シェイク!」Vol.6 どうしたら作れる、面白い企画