シェイク!Vol.8 面白いアニメとは何か考える 2nd
那須惠太朗(サンテレビ)
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片岡秀夫(東芝映像ソリューション)
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森永真弓(博報堂DYメディアパートナーズ)
シェイク!Vol.8「面白いアニメとは何か考える 2nd」のシリーズ4回目、この回では2017年冬アニメについて、出演者3名それぞれのオススメや意外と予想に反して盛り上がったトピックスについての話題が中心となっています。
何を観る!? 2017年冬アニメ
森永 さてここまで2016年秋のアニメについて話してきましたが、ここからは今クール、2017年冬アニメについての話題に移ろうと思います話していこうと思います。まだ全話放送が終わっていないものありますが、3人が観たアニメをリストアップしてきました。
片岡さんはめっちゃ観ていますが全部表示すると大変なので、一部表示にしました。片岡さんは視聴作品リストの中をさらにS,A,B,Cとランク分けされていたので、その中からAランク以上に絞っています。
まず3人が共通して観ていて人気でもあったアニメとして『幼女戦記』があります。タイトルだけ見ると萌え系のアニメだと捉えてしまいますが実は違うんですよね。
※ 『幼女戦記』公式サイト http://youjo-senki.jp/
片岡 しかも、幼女(=おっさん)は早く最前線から遠ざかれるように、どういう昇進をすればよいかどういう方策を取ればいいのか考えてうまく立ち回ろうとするのですが、それがすべて裏目に出てしまう。
森永 最初はタイトルで萌え系の作品かと思ってチェックしてなかった人が多かった作品だと思いますが、後から気付いた人たちがいて、だんだん人気が出てきました。あと3人が共通して挙げて、かつ人気の作品は『クズの本懐』ですね。
※ 『クズの本懐』オフィシャルサイト http://www.kuzunohonkai.com/
那須 『クズの本懐』にはかなりハマっています。元の原作マンガを描いている横槍メンゴさんは女性で、とてもかわいく女の子を描ける方ですが、実はこの方、成人誌出身でそこから商業誌にデビューした方なんですね。『君の名は。』の後、どんな潮流がアニメで出て来るのかと思ったら、そちらのジャンルだったのか!と驚いたりもしました(笑)。近年、R18指定の作品も手掛けた経歴のある方々の活躍って、ホント増えましたよね。例えば、『君の名は。』の新海誠さんも18禁ゲームのOPを過去に制作していましたし、『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄さんも18禁ゲームシナリオを執筆されていました。『響け!ユーフォニアム2』等を製作した京都アニメーションも18禁ゲーム原作のアニメ化をした時期もあったのです。そういう文脈上にあるクリエーターがメジャータイトルでヒットしたということも、新しい流れの出現だと思うんです。
森永 舞台は高校で、一応青春ものということになっているけれども物語のトーンとしては『不機嫌な果実』とか昼ドラとか、ドロドロしています。そこでさらに絵がかわいくてエロいんです。片隅 キスやベッドシーンもあそこまでやっていいのか、という内容でしたが、それが逆にシリアスに伝わってくる。だからと言って重たいわけではなく、演出の妙ですっと観ることができる。本当にさりげなく凄い演出だなと。感心することしきりです。
片岡 『甲鉄城のカバネリ』※がまさにそうでしたね。再編集と新作カットを足した劇場版の方がはるかに出来が良かった。劇場版は傑作でした。
※ 『甲鉄城のカバネリ』。 2016年4月より6月までフジテレビ『ノイタミナ』枠にて放送された。 http://kabaneri.com/
森永 先ほどの2016年秋アニメ分析の話で、アニメにも人間ドラマ系とかバラエティ系とかありますよねみたいな話をしましたが、新たなジャンルの作品として『鬼平』があると思います。時代劇ジャンルですね。水戸黄門みたいな扱いで、8時台・9時台に時代劇がアニメになっていてもがおかしくないと思わせてくれるようなクオリティの本格時代劇ドラマでした。
※ 『鬼平』公式サイト http://onihei-anime.com/
森永 アニメ制作者さんがおっしゃっていたのですが、「実写ドラマでは、恥ずかし過ぎて絶対言えないようなクサいセリフや、ありえないようなとんでもない展開も、アニメならではの記号性の高さが、リアルの生々しさを払拭してくれる分、逆にこっぱずかしい展開をふんだんに入れることができる」そうなんですよ。それってつまり、アニメは実写よりドラマチックにできるっていうことなんですよね。『鬼平』はアニメの文脈とは違う人にもオススメできる作品だと思います。絵柄も時代劇という言葉から想像されるような古めかしいものではなく、むしろスタイリッシュでかっこいい。しかも、スタイリッシュでイケメンに描きすぎると、ともすれば腐女子系の絵柄に行きがちで、拒否感を抱いてしまう男性も出て来るのですが、『鬼平』はそういう絵柄にはなっていない。
森永 すごいオシャレな原哲夫みたいな感じですね(笑)次に話したいのが『けものフレンズ』についてです。あの現状は何だったのか? 片岡さんは観なかったんでしたっけ?
森永 私は1話を観て最初の10分くらいで「こ、これは無理だ、これ以上続けて見られない……」と1話すら見終わらない状態で観るのをやめてしまいました。そこから、えーと時期でいうと2月6日ですかね、その2月6日に『けものフレンズ』がやばいぞ、と書いてあるブログ記事が投稿されて、それに呼応するようにそうだそうだというアニメファンが湧き出てきて、うーんこれはちょっと見たほうがいいかもしれないぞと考え直して観ることにしたんです。アニメ好きの間では有名な「まどマギ事件」というのがあります。多くの人が1話で観なくなった、下手すると1話すら見ないままの人も多かった『魔法少女まどか☆マギカ』が3話からあたりから評価が急上昇して、その勢いのままものすごいアニメになったというものです。それ以来、「自分が面白いアニメをもしかしたら見落としているのではないか」とアニメ好きは常に気にするようになって、まあ私のそのパターンでした、まんまと『けものフレンズ』も観続けることにしたんですね。
でも、白状しますと話題になっている最中も『けものフレンズ』の最終話は、『魔法少女まどか☆マギカ』みたいにすごい展開にならずに、最後まで「楽しいー」って言って終わると思っていました。伏線とか、深い世界観とか、ないない、って(笑)。でも、実際はそうじゃなかった。
森永 放送期間中のツイートの男女比を見てみましょう。データセクションさんの技術を使っているのでランダムサンプリングの10%量のグラフです。ざっくり見ていただければ良いと思います。
「けものフレンズ現象」と呼ばれるほど流行っていたいましたが、このデータを観てみると実は女性はそんなに盛り上がっていないんですね。これは私は結構納得性が高くて、自分の周りでけものフレンズに盛り上がっていたのは男性ばっかりだったのは気のせいじゃなかったんだなーと思いました。『幼女戦記』と比べると分かりやすいのですが、『幼女戦記』では男性が多いとはいえ全体の3分の1程度のツイートが女性なのに対して、『けものフレンズ』では4分の1程度。この差は大きいのかなと。ちなみに『ACCA13区監察課』はオシャレアニメなので圧倒的に女性が観ていますね。
※ 『ACCA13区監察課』公式サイト http://acca-anime.com/
このデータのほかにも放送期間中のネット上での盛り上がりを見ていると「けものフレンズ現象」は、男性ばかりが盛り上がっています。しかもどちらかというと無理やり盛り上げていったような印象を持っています。那須さんはどう思われますか?
那須 『けものフレンズ』はフル3DCGのアニメなのですが、その昔、日テレで放送されていた『てさぐれ!部活もの』と同じ手法なんです。この手法だとアニメファンがパッと見たときに親しみを持ちやすい絵柄ではなくなるんですね。5頭身で、すごくかわいく描かれているわけでもないし、ディフォルメされているわけでもない。3DCGで可愛く描こうとしたときの落としどころで5頭身のああいった絵柄になっているんです。それは『てさぐれ!部活もの』のときも同じでした。『けものフレンズ』の凄いところは、ひとつの『けものフレンズ』というジャンルを成立させたところです。アニメのほかにマンガやゲームは違う絵柄でも成立していますしね。「この絵柄のこのキャラクターが好き」と思うのが一般的だと思うのですが、そうではない。ひとつのカテゴリーとして『けものフレンズ』があって、その表現のひとつとしてアニメやマンガやゲームがあるという点が受け入れられたのが面白いです。そして、そういう楽しみ方をするのは女性よりも男性なのかなと思います。
片岡 たしか6話か7話で、それまでのツイート数がトップだった『ガヴリールドロップアウト』を抜いて、以降ずっと1位のツイート数でしたね。最後の11話はニコニコ生放送がダウンして事件になっていました。「けものフレンズ現象」のひとつの捉え方としては「まどマギ事件」や「ガルパン事件」のように1話で切っちゃって後悔したトラウマがあるアニメ好きが大ヒットの可能性を初期のころに感じていたということがあります。
もう一つは「みんなで盛り上げて俺たちがヒットさせるんだ」みたいな仲間意識がネット上で働いたのかなと思っています。ここまで来たらみんなで盛り上げようという、ネット上でのイベントになっていきましたよね。「バルス祭り」※のようなものです。「俺たちが時代を変えてやる」というようなネット民たちによる応援のレールに上手く乗ったところがあったと思います。
※ スタジオジブリアニメ『天空の城ラピュタ』の作中で使用される言葉。地上波放送時に作中の主人公が「バルス」と言った瞬間、ツイッター上で大量に「バルス」と書き込まれた。
「シェイク!」Vol.8 面白いアニメとは何か考える 2nd
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第1回:
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第2回:
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第3回:
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第4回:何を観る!? 2017年冬アニメ
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第5回: