G プレス | 2018年6月22日
Gプレス シェイク!Vol.17 記事(5)

シェイク!Vol.17 「気になるコンテンツの見つけ方」
藤村忠寿(水曜どうでしょう)
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林雄司(デイリーポータルZウェブマスター)
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小国士朗(NHK制作局)

連載最終回は、NHKが作った視聴者が1カメラマンとなって動画を投稿出来るアプリ「NHKテレビクルー」の話題を中心に話が進んでいきました。そして最後はやっぱりコンテンツだという話になりました。

視聴者がカメラマンになる新しいアプリ

 
テレビの人が来ると、カメラか音声、どっちかの人が怖かったりするじゃないですか。ふわっと「こんなかんじで」とか言うと怒りそうな。


藤村
藤村 
あるある。彼らは自分たちのノウハウを必死に作り上げてきたわけだよ。取材時は最初はここから映して、ロングから行って、みたいな。それを崩そうとされると、彼らの存在意義がなくなっちゃう。で、怒るんです。


小国
小国 
このあいだ、「NHKテレビクルー」っていうアプリを作ったんです。ダウンロードしてくれた人には、こちらからいろいろ指示が出せます。いまやみんな普段からスマホ使って撮影・発信してるんだから、みんながNHKのカメラマンになってくれたほうが絶対いい。




藤村
藤村 
うちの番組もカメラマン使ってないんです。ヨドバシで買ってきたマイクで、ディレクターが撮っている。そしたら会社から、それはダメだ、前と後にテレビカメラとカメラマンを使ってくれ、と言われた。なので公園で撮っている。


 
あれはそのためのコーナーだったんですね。


藤村
藤村 
そうなの。テレビとしての体裁のためにやってたの(笑)。


 
 「テレビクルー」いいですよね。このあいだ、求む! 汚いスニーカー動画って指示が来てました。


小国
小国 
 「あさイチ」が汚れたスニーカー特集をやるから募集して。日本中から動画が100本、すぐ集まりました。


藤村
藤村 
いいね。じゃあ今までの記者の取材ってなんだったんだろうっていうね。


小国
小国 
これまで一番集まったケースでいうと、1200カメ集まりました。日本には5000万台のスマホがあるといわれているわけです。だったら5000万カメで番組を作るって発想したら、とたんにスケール感が出てくる。


藤村
藤村 
番組に参加しているという意識も生まれるしね。人は使われると喜びます。


小国
小国 
クラウドファンディングでイベントをやってみたときと感覚は似ていて、これは映像のクラウドファンディングなんですよ。


藤村
藤村 
それはいいね! 我々がそんな仕組みを考えついても、実際の番組で使うのはなかなか難しい。NHKがやってくれるとありがたいよね。


小国
小国 
結構ウケたのが、「みんなでつくる! スマホ桜前線」。各地で家の前の桜を撮ってもらったら、ぜんぜん桜前線どおりじゃないっていう(笑)。それを「おはよう日本」で取り上げました。


 
それ、こたつ出した前線とか、できますねえ。


小国
小国 
……。


藤村
藤村 
わははははは。




小国
小国 
いま、iTSCOMの人の気持ちがわかりました(笑)。

 
ぼくねー、千葉のおじさんの写真集めたいんですよ。


小国
小国 
なに言ってるんですか?

 
親戚にひとりぐらい、千葉のおじさんっているじゃない?


藤村
藤村 
知らねえよ! おめーんところはそうかもしれねえけど!


 
千葉のおじさん、川越のおじさん。宇都宮のおじさん。


藤村
藤村 
確かにね、川越あたりいそう。


 
おじさんを撮って、日本地図にマッピングしたいんですよ。こういう千葉のおじさんいるんだーっていうのを見たい。


小国
小国 
Google+に、セブンティーンアイスの自販機の場所を情報共有するコミュニティがあるんです。ああいうのいいですよね。それから、テレビクルーアプリでは3.11の時に特番も作りました。震災の特番って、「苦難があって、それでもがんばる」っていう型通りなものが多くないか?というのが出発点で。それは手放してみようと。あの震災でわかったのは、大切なものってある日突然なくなっちゃうんだってこと。そのことは普遍的だから、あえて3.11に「あなたにとって大切なものはなんですか?」 と問いかけて思い思いの大切なものを撮ってもらおうと。そしたら、元SEALDsの奥田愛基くんが、毎日のように彼女とのラブラブな日々の動画を毎日送ってくるわけ。おったまげました。このアプリを作ってよかった。ぼくらのカメラじゃこの距離感では撮れないですから。


藤村
藤村 
ドキュメンタリーの取材でそのぐらい肉薄するときはあっても、それとは違う空気感は絶対あるよね。


小国
小国 
そう。日常の延長っていうか。お父さんがガチャってドアを開けたら、「パパー」って子供達が駆け寄ってくる動画もあって。これはねー、ぼくたちには撮れない。それが番組のファーストカットになりました。


藤村
藤村 
なるほどーなるほどー。いろいろ考えちゃうなあー。ぼく基本的にパクるんですよ(笑)。ぼくだったらどう使うかなあー。


小国
小国 
ドラマも作りたいんですよね。このアプリを使った「東京ミラクルシティ」という特集番組があって。一般の人たちが撮影した東京に関するスマホ動画をもとに、クリエイターが作品にする番組です。そこで、長久允さんという、サンダンス映画祭で日本人で初めてグランプリを取った監督と、中学3年生女子とで作った「東京GRADUAITION」という5分ぐらいの短編があります。長久さんがプロットを書いて、台詞もあって、「友達との日常を撮ってください」「好きなものを撮ってください」って指示もあるんだけど、あとは自由演技です。最後は「旅立ちの日に」っていういまの卒業ソングを歌ってもらって。やっぱ面白くて、感動するんですよね。


藤村
藤村 
そろそろ時間かな。今日のお題は「気になるコンテンツの見つけ方」か。そういう話するの忘れてたねー。どうしよう(笑)。


小国
小国 
質問を受けて、来場者になんとか引き戻していただく作戦にしましょう。

客席A
客席A 最近テレビで「撮れ高オッケーです」って言葉をよく耳にして、違和感を覚えています。このコーヒー飲んでるシーン、撮れ高オッケーだから半分で終っちゃうのかーって、置いてきぼりを食らうことがあるんです。それについては、どうお考えですか?

藤村
藤村 
ぼくもロケ中は思いますよ。「いまの使えるなー」とか「まだCMまで行ってねえなー」とか、テレビディレクターとして目安は考えますよね。でもそれが、業界用語としてどんどん前に出ちゃうと、視聴者は変な気持ちになるかもしれない。この人ここまで撮れたらもういいって思ってるのかってね。


 
デイリーポータルで、「多摩川で川床を作る」(リンク:http://portal.nifty.com/kiji/130921161836_1.htm)っていう企画をやったとき、いつ終わっていいかわかんなくて。いらないことをやるときの終わるタイミングってわかんない。いま帰って記事になんのかなーって。


藤村
藤村 
だからあなたたちは、もう地図もないわけよ。とりあえず歩いてる。


 
SMAPみたいですね。

小国
小国 
かっこいいですね。


藤村
藤村 
いや、かっこいいんじゃないって。ということで撮れ高の話はこれでいいですね?

客席B
客席B 尺が決まっていて型にはまった表現の究極がCMだと思うんです。CMに対して、思うことはありますか?

藤村
藤村 
15秒、30秒に決まってるのは、変えるのめんどうくさいからですよ。テレビ局も、広告代理店もめんどくさい。もっと尺を長くして5分間のパブリシティ番組とかをやっても、あれにしたってシステマチックでしょ。ポスター貼って、キャンペーンのおねえちゃん立たせて、やってることはどこも一緒。だからネットにどんどん食われていく。


 
最近うちの妻が、「ハイボール万歳!」という面白いパブリシティ番組見つけてきました。元サッカー選手の武田修宏 が、ハイボール飲むたび「うまいー」って目をつむるんです。ほとんど目をつむりながら飲み食いする番組なんですよ。いいでしょう。


藤村
藤村 
それは、あなたみたいにふざけた、人を小馬鹿にした視線でテレビを見ている人には面白いかもしれないけどね(笑)。


 
うん(笑)。


小国
小国 
テレビもCMも、オワコン感があるところが似ています。システムががっちがちに決まっていて、フォーマットに全員が縛られている。広告で得られる効果は減ってきている感じがします。ぼく自身、CMで覚えているものが少なくなってきました。1周か2周して、やっぱりコンテンツが大事だっていうほうに、広告も戻っていくんじゃないでしょうか。林さんの話にあったように、武田が「うまいー」って目を閉じるのが、コンテンツとして成立していれば、ちゃんと刺さる人がいる。まあ、稀有な例かもしれないですけど(笑)。テレビというスタイルも、広告というスタイルも、大切なのは、コンテンツとしての力です。


藤村
藤村 
という、いい話でしめるということで。


 
いやー、いい回答でしたね。


藤村
藤村 
本日はみなさんありがとうございました。さあビール飲むぞー。