くまもと県民テレビ 制作部長

※役職等は収録当時のものです

中島 研さん

G プレス | 2016年5月16日
GPRESS vol.138 理想は究極のマンネリ 視聴率20%!地方の“お化け番組”を再生

理想は究極のマンネリ 視聴率20%!地方の“お化け番組”を再生

 くまもと県民テレビで1997年から毎週月〜金曜の夕方に放送されている情報ワイド「テレビタミン」。 同局の本橋馨、村上美香の両アナウンサーを中心に、地元タレントらが県内の話題やスポット、人物などを紹介する企画や、動物のカードをめくって賞品がもらえるゲームコーナーが人気で、最高視聴率約20%、平均視聴率も10〜12%という絶大な人気を誇る〝お化け番組〞だ。同番組のスタートから制作にかかわり、一時は数%まで落ち込んだ「暗黒時代」から人気番組へ再生した中島研制作部長に、V字回復の秘密を聞きました。

GPRESS vol.138 / 2015.October より
中島 研さん

くまもと県民テレビ 制作部長

なかしま・けん 1969(昭44)年12月1日生まれ。 福岡県出身。 92年熊本県民テレビ入社。 業務部、報道部を経て、熊本初の夕方情報ワイド番組「テレビタミン」の立上げに携わる。 その後、01年に日本テレビに出向し、「ズームイン!!SUPER」を担当。 出向後は「テレビタミン」の総合演出などを担当し、12年からプロデユーサーに。
毎年来場者数が10万人を超える、熊本市中心市街地で開催されるイベント「夢まちランド」も担当する。

名物コーナーになったポイントは?

10数分ぐらいかかるんで1人にしようと思ったら、上司から「ファクスやメールだけでなくはがきの申し込みもあるので2人やろう」と言われました。「ゲームは単純なので、視聴者とのやり取りをすることでファンを拡大していく企画だから、クイズは二の次でお願いします」と言ったら、いまでは無駄話ばっかりで20分ぐらいかかることもあるんです。どんどん尺(時間)が伸びていって、TK(タイムキーパー)さんから「尺が読めないので困る」と言われもするんですが、生放送ですから何とかなります(笑)。毎日長時間かけるものでないと、「名物コーナー」にはならない。毎日続けることで「『はい&ろー』=テレビタミン」になりました。毎週はがき、ファクス、メールで多い時には3000通を超える応募が来るようになりました。

それ以外の回復のポイントは何だったんでしょうか?

迷っているときは、メインのVTR企画を番組冒頭でやったり番組後半でやったりと番組構成を日替わりで変えていたんですが、「テレビタミン」は高齢層の視聴者が多いので、時間的に何時なったらこのコーナーということで、時報代わりに見てもらえるように、きっちり整理したんです。昔のドリフの8時だョ全員集合がオープニングのあとコントがあってゲストの歌があって合唱団があってミニコントがあってエンディングみたいに。番組スタートがそうだったように。

そうした改善は効果が出るまで時間がかかるのでは?

 上司にも恵まれて、底まで落ちたら、あとは上がっていくしかないんだから、「任せるからやれ」と言ってもらえたので、筋道付けて信じていくしかない。少しずつ整理しながら、1年ぐらい頑張ったら何となく数字が取れてきて、10%を超えてきて、12、14と上がってきて、20%近くまでいってしまいました。それで少しずつ視聴率が戻ってきました。2014年には最高の19%も出しました。

V字回復を達成できた要因はなんですか?

 番組開始からキャスターが変わっていないのは全国的にも珍しい。本橋と村上をはじめ、スタッフみんな力を持っていて、他局と比べても負けていないと思う。出演者から制作スタッフ、営業部まで共通認識で「テレビタミン」って何か分かってくれていると思う。野球でいうと1番から9番までキャラクターが違う人間がそろっていて、監督からしたら非常にやりやすい。若手、中堅、ベテランとそろっていてバランスも良かった。

回復後も好調をキープしている秘訣(ひけつ)は?

 お年寄りの方が相手の番組だということは忘れるな、といつも言っています。ただ悪かったときは、お年寄りだけに向けた企画をやらないといけない、それだと面白くない、という悪循環に陥っていた。お年寄りに分かりやすい言い方、横文字はできるだけ言い換えよう、ということで「おもしろグッズ」は「おもしろ商品」にするとか、「デザート」はいいけど「スイーツ」はどうか、みたいな議論をしています。ネタ自体は若い人向けでも良いんですが、演出をお年寄りでも分かるような表現にしようということです。

企画での注意点は?

 雑誌やタウン誌でやれる企画はやめようと、グルメでもカタログ的なものはやめて、見てためになるとか、役に立つとか、見て笑えるとか、何か付加価値があるものにしています。
我々ローカル局は人物を追い、地域貢献をしないと生き残れないと言われています。

また「10年周期」が巡ってきますね。

先程、言ったように理想とするのはドリフターズの「全員集合!」のように、マンネリが大事だと思っています。暗黒時代はマンネリが悪いというだけでした。今後は大枠は変えずに、少しずつモデルチェンジをしながら、究極のマンネリを続けていきたい。縦軸で変えない、「笑える月曜日」「がんばる火曜日」「得する水曜日」「おいしい木曜日」「楽しい金曜日」など曜日のテイストと時間割は変えずに、飽きられないように企画を作っていければと思います。