G プレス | 2016年5月16日

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営業が不可能を可能にする。

テレビを巡る仕事にはさまざまなものがある。民放として番組を作り、会社を発展させるために欠かせないのが営業という仕事だ。
讀賣テレビ営業局営業部で副部長を務める片岡みほさん。２女を育てながら、浪速（なにわ）女のバイタリティーで、テレビ界を生き抜いてきた。そんな片岡さんに、 テレビウーマンの生き方を聞いた。

なぜテレビ局に入社したのですか。

中学の時に飲料メーカーのCMの映像にあこがれたのがテレビを意識するきっかけでした。どうやったらこんな映像が作れるのかと思っていて、大学は、 関西大学社会学部のマスコミュニケーション学専攻に進みました。生まれも育ちも大阪のどまん中なので、「笑いを世の中に出したい」 とも考えていて、読売テレビ出身の 「笑い学」 の研究者である井上宏さんが当時大学で教えておられた縁もあって読売テレビに入りました。

最初に営業部に配属されたんですね。

当時、 営業部の渉外に女性が配属されるのは在阪局で初めてで、またバブル全盛期だったこともあり、就職活動もモスグリーンのスーツ、赤い縦縞のシャツとか、ボディコンパンツスタイルでしていたんですが、 入社してみる何を着たらいいか分からない。パンツスーツはダメ、 ブランドもののバッグもダメ、 ヒールもやめてとか、会社もどう扱っていいか分からなかったんでしょうね。

当時の思い出は。

当時は視聴率も売り上げも最下位だったので、 ひたすら上を見ているだけでした。 また、 バブルの名残もあったせいか何とか目立とうと思って、 量販店のお客さんの社内販売に協力するために、 ｙｔｖ社内を営業して回って350万円分も売り上げたりしてました （笑い） 。

その後、 編成に行かれたんですね。

約4年間、 営業を経験して、 次は、 「編成に行きたい！」 って売り込みました。 編成時代には阪神・淡路大震災を体験しました。 実は当日編成局の新年会の予定があったので、 家を出るときは、 赤いボディコンの上下にヒールの靴を履いて行きましたが、 ほかの編成部員は一人も出社できない状況で、 たまたま大阪に来ていた東京支社の編成部員と2人で丸2日間 （仕事を） やりました。

震災で何を学びましたか。

当時は編成に行ったばかりでまだ雑用中心の仕事が多かったので、 自分で全部やらないといけないというプレッシャーと闘いながら、 報道と相談して緊急事態ということで、 当時の営業のスポットデスクチーフとかけあってCMを報道特別番組の本編内に戻したり、 放送のシステムを必死で学びました。その経験は編成を出てからも、9.11の米同時多発テロ事件とか、 緊急事態にも落ち着いて対応できることにつながりました。

編成での思い出は。

どうやったら視聴率が上がるか、 皆で必死に考えて、 当時ゴールデンで高視聴率だった「火曜サスペンス劇場」 を夕方の枠でリピート放送をしたら、12 〜 13％の高視聴率を取ることができ、 ようやく全日帯で1冠を取れて、 チャンスが広がっていくのを感じました。

スポーツも担当されたんですね。

最初は、 近鉄バッファローズを担当し、 その後、 「週刊トラトラタイガース」 （阪神タイガースの応援番組） を担当したりしました。まだ当時はスポーツに対する環境がよかったので、 人を追いかけるスポーツドキュメントも制作できました。 その後、 野球の視聴率が低下することでナイター中継もBSやCSが中心になり、 テレビにおけるスポーツ中継が減ったことで、 やり残した感じはありました。

そのころ結婚・出産を経験されたんですね。

2人娘で、 いまは3歳と13歳です。 スポーツの頃、 当時、 スポーツドクターをやっていた夫と結婚して、 長女を産んだんですが、 営業の女性では最初でした。 また会社と家と実家が近くてすごく恵まれた環境で、 実家の両親や夫の協力もあって、 育てることができました。

10年後にもう1人出産して、 仕事への復帰も大変だったのでは。

1人でもういいかとも思ったんですが、 やはりもう1人欲しいということで42歳になってから、 2人目を授かることができました。2011年3月9日が予定日で、 結果、 東日本大震災直後に出産しました。 当時、 営業部は女性も多かったので、 2人生んでもしっかり復帰できるということを知ってもらいたいと思いました。 しかも、 出産後半年で副部長になり、 私の場合、 何せ、 高齢出産だったので、 体形を維持するために、 産前産後はもちろんのこと、 自分なりにメンテナンスには力を入れてます！またママチャリも絶対にアシストにはしません （笑い） 。 今うちにも多くの女性社員が出産し、 産後も職場復帰しています。 妊娠してからのマニュアル的なものはありますが、 出産後にどう復帰するかのプログラムがまだ不十分だと思います。 現状、営業部員で妊婦がいます。 彼女が無事職場復帰できるようサポートしたいです。

営業に戻ってからの思い出になる仕事は。

営業企画を担当しているとき、 「セカイのどこかで」 という番組を企画しました。 世界で活躍する日本人をロケして紹介する番組だったのですが、 そこでオーストラリアの先住民族のアボリジニアートにかかわる女性を取り上げたのが縁で、 局のイベントに、 自分の戸籍すらないアボリジニのアーティスト女性2人を呼ぶことができました。

営業の面白さとは。

営業という仕事は、 何かうちの局とつながるきっかけをつくり、 コーディネートすることです。 スポンサーを探すのはもちろん、 映画も制作できるし、 展覧会やシンポジウムなどのイベントも仕掛けられます。お金があったら不可能を可能にできる。 夢をかなえることができる。 また、 毎年旬の業種が出てくるのも面白いですね。 最近スマートフォンのアプリゲームが伸びているとか、 先端を行く企業と次々お付き合いできる。 テレビのライバルはいろいろ出てくると思いますが、 まだまだ家にいればみんなテレビをつけるし、 テレ
ビを見て笑っているし、 そこから、 どこで面白いビジネスができるか分からないですよね。

テレビ業界を目指す人へのアドバイスを。

採用面接をすると、 パッと光る人材となかなか出会わない。 せっかくの学生生活なので、もっと遊んで、 思い切ったチャレンジをした方がいい。 私も中・高・大と、 アルペン競技スキーと出会ったことで、 インターハイ、 国体に出場。 大学では、 たった一人の女子部員として入部したら、 最初に先輩から 「むちゃくちゃ練習するけど、 ４年間やったら絶対将来の役に立つから辞めるなよ」 と言われました。 確かにみんなで１００キロ走ろうとか、 夜中中ずっと走ったり、 確かに根性はむちゃくちゃつきましたね。 それだけじゃなくて、 ３年時には、学生証の証明写真をワンレン、 ボディコン姿の写真を使ったら、 学校から 「学生らしくないんでもう一度取り直してください」 と言われたんです。 よっぽど遊んでいるように見られたんでしょうね。 ものすごい厳しい練習するけど、 ひたすら遊んで、 オンオフがめちゃくちゃはっきりしていました。 バイトも夏に60万円を稼ぐ目標で、 自動車部品工場に勤めたり、 山形の月山の旅館で住み込みバイトしながら夏スキーの練習をしたり、 行けって言われたわけではなく、 いろんなところに自分からチャレンジしに行きましたね。 バブルだったので、 やりたいことは、 いっぱいやりました。 また、 会社に入って挫折する人が多いので、 いろんな失敗もできるだけ早いうちに経験しておくといいですね。

経験が仕事に生きるということですね。

大学に入学するときに偶然出会った大学の方とのご縁で、 番組と大学との連動で、 シンポジウムを開くことになったり、 いろんなことにチャレンジしたことで、 人と出会って、 それがつながることもありますからね。

―貴重なお話ありがとうございました。

文・写真　猪狩淳一