Gプレス | 2016年7月21日
Gプレス シェイク! Vol.2 記事

シェイク! Vol.2 今一番注目しているヒト・モノ・コト
西田二郎(読売テレビ)
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指出一正(月刊ソトコト)
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ナカムラケンタ(日本仕事百貨)

テレビマンと異業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。第2回は、読売テレビの「ダウンタウンDX」のチーフプロデューサーを経て、営業企画開発部長(当時)として新たなメディアビジネスを探っている西田二郎さんと、ソーシャル・デザインやエコといったテーマをおしゃれに紹介する雑誌「月刊ソトコト」の指出一正編集長、会社のいいところだけでなく、大変なところや働く人の思いや葛藤なども紹介するユニークな求人サイト「日本仕事百貨」を運営する株式会社シゴトヒト代表取締役のナカムラケンタさんが登場。「今一番注目しているヒト・モノ・コト」をテーマに語り合った。


自分が作りたいものしか作っていない

指出
ソトコトが17年、200号を迎えたのを記念して自分を無料で貸し出す、レンタル編集長というのを1月からやっていまして、もう20カ所回っています。先日、函館に行ったときにある女性に言われたのですが、「ソトコトがやっているビジュアルはおしゃれすぎて、ちょっと自分には遠いんです」と。確かにソトコトは、ソーシャルというテーマで、社会によりよい形とか社会にどう関わるかというのを記事にしている。僕も自分で見ていて、(被写体の)笑顔が連なっているんですよ。ときどき、そういうのばかりだと不自然かもしれないと思うときがある。本当はときに辛い思いをしてやっていたりとか、実際に地域と真摯に関わっていると思うので、イメージとしておしゃれすぎるというのはあります。ただ、もともとはみんながなかなか興味を持てない環境問題をファッショナブルに語ろうということが狙いの雑誌です。それなので、「環境問題を真剣に語ると重すぎて距離を置かれてしまうな」っていうのが僕のなかにはいつもあって、意識的に例えば、水俣病を含めた水俣という地域の現在を、ありのままにかっこよく紹介するという手法をとってきた。興味のない人たちに多少でも社会や環境のことを知ってもらい、振り向いてもらうには、スタイリッシュさとかファッションは必要です。その反面、その女性に言われたように、おしゃれすぎるとか、素敵すぎるとか、と言われることもあります。


西田
身の丈に合ってないというとこですね。こんなカッコよくないよって。


指出
先週、ある作家さんのところに行ったのですが、「ソトコトはよい雑誌なんだけど、笑顔しか出てないのが気に入らない」と言われました。


ナカムラ
僕も雑誌の取材を受けるのですが「笑顔でお願いします」ってよく言われるんですよ。でもあるとき笑顔がいやで、笑顔じゃない写真を撮ってもらったんですよ。そしたらその次の取材では「やっぱり笑顔で」って言われてしまって(笑)。


指出
笑顔が多すぎるのも善し悪しだなとは、思いました。


ナカムラ
日本仕事百貨は求人サイトなんですが、あるがままを紹介するように心がけています。クライアントに寄り過ぎることはしないように、自分たちの判断でやっている。読み手が中心なんですよ。バランスのとり方としては、仕事を探している人がどういう情報がほしいのかとか、どういうことを不安に思うのかとか。いいことばかり書きたくない。クライアントにつき返すこともあるし、ネガティブなことも書くんですよ。仕事は、その人の人生に関わることなので求職者が会社に入って「あれ?想像と違う」と思われるようなことはしたくない。求職者がどう思うのかを徹底的に想像して、一方でクライアントの潜在的な思いも引き出しつつ、最終的には取材したい自分がどうしたいか。その三者の目線でぐるぐるしながら文章を書いています。でも根っこをたどれば、自分が作りたいものしか作っていない。


西田
それをしているから、よいユーザーが集まるというか、信頼できる人たちが来るから、情報が良い悪いにしろ、来てくれるという循環モデルができているんですね。


ナカムラ
そうかもしれませんね。営業はしていないんです。このトークセッションみたいなものも営業行為というなら、営業ですけど。


西田
スマホで見ましたけど、どうやって営業しているのかなって。お金もらってまっせ感がないからすごいなって。


ナカムラ
営業してないけど結果が出るので、クチコミで広がっていき、依頼いただける。しかも、その時点で自分たちのスタンスを十分理解していただけるから、仕事が進めやすいし、うまくいきやすい。それでまた採用につながると、また相談いただけるし、ご紹介いただけるんですね。そういう循環ができる。一気に盛り上がったことはありません。着実にちょっとずつ広がっています。


西田
それは、何歳ぐらいで思い付きました?


ナカムラ
26歳くらいでしょうか。前回、東京R不動産の吉里さんいらっしゃいましたよね。僕は、建築を勉強してから不動産の仕事をしていて、世代は東京R不動産の人たちの下なんですよ。彼らがビジネスとして成功しているのを見ていたからこそ、自分たちにもできるなと思っていた。大きなビジネスにはならなくても、着実に仕事になるなと思っていました。それで28歳のときに独立するんです。

世の中から文化の香りがしなくなった

西田
日本仕事百貨を見ていると、一枚目の写真がグッとなる。伝わるんですよね。キャラクターというか。文章もそうですが、ちゃんと伝えようとして、テレビで言うと、言われたことをやっているようなやらされている感は多いにありますね。僕は、20年以上制作をやっていて、その後営業の企画をやるときに最初に思ったのはそこですね。お金をもらっているからといってお得意様の言われたままにしないこと。ちゃんと向き合って作り手の意思を入れた愛情表現、データやスペックだけの表現では結局お得意さまも視聴者も満足させられないんだって。広告表現の中にあって営みを文化のレベルにもっていこうと言ってきました。文化って言い出すと、人々が文化を感じなくなってきたような気がする。昔は文化っていう場所があった。世の中からそんな香りがしなくなったような気がする。


指出
ナカムラさんと僕が発する言葉というのは共通項が多いと思います。ソトコト自体も、社会と関わることがおもしろいと思っている世代に向けて作っているので、例えば、リノベーションスクールのようなプロジェクトに興味がある方が多いんです。自分が自由にできる時間があったとしたら、受動的にテレビを見ている時間より、地域に関わったり、自分で居場所をつくったりとか、自分で自分の暮らしをつくることにカジュアルに時間を割いている。文化というところでいうと、東京的なところでなく、地方的な価値観に魅力を感じて、そこに関わりたいという世代が増えている。マスメディアが発信した情報を受け取る楽しみとは、また別の楽しみという感じでしょうか、ローカルメディアなどで自分たちの価値観を発信していくのが楽しいと気づいた人たちも増えています。だから、マスメディア的な手法で、ひとつの箱にたくさんの人が来るという仕掛けよりも、小さな箱に20~30人くらいとか、いろいろな人たちがつながり、顔の見えるところで、自分たちが見えるところで何かをやっているのが楽しいとか、そういうのが文化というか。


ナカムラ
インターネットなどを含めて、あらゆるところから情報がやりとりできるようになりました。だからこそ、リアルな場所の役割は明確になったと思います。それって、つまり人との関わりだとか、ライブだとか、そういうことだと思います。今、“popcorn”というどこでも誰でも映画を上映できるプロジェクトをはじめようとしているんです。音楽業界もCDが売れないと言われているけど、ライブやフェスは盛り上がっている。そしたら映画業界のライブやフェスって何なのでしょう。それって、映画館だと思うんですけど、既存の映画館では限界があるんです。なぜなら決められた時間に映画館に行って、知らない人と肩を並べて見て、誰とも話すことなく映画館を去っていく。これって、リアルな役割を十分果たせていないんです。誰でもどこでも映画を上映できる仕組みをつくることで、いろいろな鑑賞体験が発明されたらいいなと思っています。たとえば、ロケ地で映画を見るとか、カフェで鑑賞後に一緒に食事をしながら映画について話すとか。そうやって映画が人と人をつなげるきっかけになったり、また映画館に行ってみようと思えたらうれしいですね。


西田
そこでは映画をみんなで見る?


ナカムラ
そうですね。みんなで見ることに価値があると思います。先ほど西田さんは「世の中から文化の香りがしなくなった」とおっしゃっていましたが、文化というのは人と人が関わることに宿るように思います。情報にも宿ることはあるでしょうけど、それも厳密に言えば、情報をどう人が扱うかだと思いますし。


西田
雑誌というところではなくて、雑誌を越えてやっているということですね。

もう編集部って言っていません

指出
実は、僕らはもう「編集部」って言っていません。正式には「第一事業部」と言っています。固いでしょ(笑)。僕らは第一事業部とあえて名乗ったんですよ。雑誌というメディアはもう爆発的には売れる時代ではないので、おそらくソトコトを知っている人が増えていても、だからといって毎月の発売日を心待ちにしている人がたくさんいてくださるという認識は甘いのではと思っている。もう、かつて雑誌を買って得ていた必要な情報は、SNSで無料で手に入ったりしますよね。だから、極端なことを言えば、僕たちは誌面の体裁やフォーマットなど、ソトコトという紙媒体のしつらえのための、形式面の美しさばかりをていねいに追求して、そこに時間をかけて、「隙のない雑誌」のみを作ることはやめました。そして何をやるかといえば、第一事業部は、そこのフェーズを飛び出して、例えば、県や市町の文化広報誌をつくるお手伝いをしたり、たとえば、広島県さんや島根県さんとの共同事業で、東京にいる地域に関わりたいと思っている人たちと、広島や島根の中山間地域をマッチングして、人材育成の講座を5年ぐらいやっています。東京にいながら地域の人たちと関わり合いを持って、新しい場所をつなぐということも事業として、仕事をしている。誌面に広告を取って収益を出す、購買者の数を増やして利益を出すというクラシックメディアの価値観では、到底、まかないきれない仕事に踏み込んでいます。


西田
ソトコトのブランドがあってこそですよね?


指出
そうです。なくすわけにはいかないので。ソトコトっていうのが無色透明だと科学反応が起きませんから、紙媒体がいくら古い文で語られても、紙のものとして、実体あることで新しい事業に結びついているの側面も強い。これから、日本の地域のカフェや温泉、そして大きな博覧会のプロデュースも始まる予定なんですよ。


西田
作ったもの勝ちですね。


指出
でもソトコトは、ほんとうにすごい低空飛行ですよ。創刊からしばらくは売れなかった。頻繁に営業部と広告部から、 “弾劾裁判”を受けて大変でしたよ(笑)。2012年に「ロハスピ−プルの快適生活マガジン」というサブタイトルから、「ソーシャル&エコ・マガジン」としてモデルチェンジをしました。それまでももちろん、エコとかロハスに共鳴して応援してくれる読者の方やクライアントさんがいました。でも、3.11が起きて、社会と時代がどうもみんなもう雑誌を買う気分じゃなくなってしまった。編集長になったのが2011年6月5日です。ロハスは、僕がずっと担当してきたものだったのですが、もはや自分ひとりのことを考える時代じゃなくなったのでしょう。それでサブタイトルを変えたのです。そして、社会みんなで子育てをしようという特集「ソーシャルな子育て」が、フルモデルチェンジの第1号だった。これがまったく売れなくて、各部署から怒られて。「早く韓流の特集を組んでくれ」とか(笑)。毎週、弾劾裁判でした。


西田
戦い続けた理由ってなんですか?


指出
08年から、ETIC.さんが主催する「地域若者チャレンジ大賞」の審査員をやらせてもらっているんですよ。高知の女子大生が、地元の干ばつ材を使って、一生懸命犬小屋作っている会社の社長さんと、インターンシップでお互いに学び合いながら、犬小屋を作る方法を書籍にしてその賞をとったり。若い人でおもしろい人たちが東京以外にもいるんだなって認識できた。そうしたらリーマンショックが起きて、08年以降、地域に入る若者の、関わり方のバリエーションが増えたんですよね。いわゆるソトコトの中でおもしろいことをやっているプレーヤーとして紹介しているような若い人たちが。この審査員の経験をはじめ、ソトコトをつくる際に、マーケティングで、「この層がいるからこっちにぶつければいいだろう」っていう、何だか目に見えないマス狙いじゃなくて、僕は、地域に飛び込んでいった、社会や未来をおもしろくしようとしている若い人たちとの接点をたくさん持っていたので、こちらの側を信じてソトコトをシフトさせたほうがよいだろうって。でも、いばらの道でしたね。


ナカムラ
そこからうまくいったんですね


指出
うまくいきました。12年4月号の実売が2、3割程度だったのですが、12月号で「若い農家が日本を変える」という特集をして、これが売れた。3.11の影響があって農業というのがネガティブワードで書かれる時代でしたが、EXILEみたいなユニットの若くてかっこいい男の子たちの農家集団をいくつかの地域ですでに取材して、若い人たちの顔が見えていたので、作ろうと思った。会議で営業部から「誰に向かって作っているの」って言われて、「分からない」って(笑)。テレビと同じ葛藤だと思います。9戦9敗ぐらいしていますからね。いろいろ迷走している。12年の4~12月くらいは僕らの迷走っぷりが見えますよ。ホームページでも見られるので、確認してみてください(笑)。


ナカムラ
ビジネスモデルとともに、雑誌のあり方みたいなものも確立したんですね。


指出
確立しました。僕らはニッチテールだと思う。決して30~40万部を売るための雑誌作りをしているわけではなくて、ある程度自分たちの顔が見える人たちに作っている。ある意味でデジタルではない形で、読者や助けてくれる人との関係性をこの5年間、08年から考えたら8年間少しずつやってきたことが大きいと思います。あと、限りなく最先端をやろうと思ってソトコトを作っていないので、どちらかというともしかしたら野暮ったかったり、時代遅れにみえることを率先して取り上げている。むしろ、いまは世の中のスピードが速すぎて一周遅れて、トップランナーに見えている部分もあるのかなと。


ナカムラ
つまりマーケティングリサーチするというよりも、実際に顔が見えるリアルな世界で感じたことをやっている。各編集者が主観でやっているということですよね。


指出
今、わりと順調なんですけども、いち編集者としては、ソトコトの次の代のキーワードも見つけておかないとよくない。スローフードやスローライフ、ロハスから、ソーシャルとかローカルで低空飛行から少し上がってきているタイミングなのですが、これがいつまで安定して続いていくのかは、具体的には分からない。だから、そこに伴走するかたちで、もう1個ジャンルを考えておかないといけない。自分の中で実はそれが決まっていて、今もちょっと試しているのですが、そのテーマも、やはり本当に売れないんですよ。今まで失敗したことが多い編集者なので(笑)。でもちょっとずつ上がってきている。


西田
ナカムラさんは順調じゃないですか


ナカムラ
ぼくらは少しずつよくなっている、という状態です。はじめたのはリーマンショック後なので、求人数というのが底だった。そこからは世の中の求人数はずっと右肩上がりなんですね。一概に僕らがうまくいっているかは分からないです。指出さんと一緒で、僕らも主観で、各編集やライターが考える。クライアントからお金はいただいているわけだけれども、求職者目線で書くことを大切にしています。そこはぶれないように。

文脈を作ると終わってしまう

西田
バンジージャンプとか、高いところから降りるような画は、視聴者が何秒間かチャンネルを変えないんですよね。おもしろいというよりチャンネルを変えないようにどう演出するか。継続的に見せる事が視聴率獲得のキーになる一例ですね。建設するところから形になるまで定点で撮影しておいて、完成までを早回しで5分ぐらい流していたら人はジッと見てしまうはずです。ひとは物語の入り口に入ったら見てしまう習性があるんです。優秀な先輩で、優秀すぎるがゆえに情報が整理されすぎて完結してしまう。一時間のなかで沢山完結すると、終わりが多くなって人の気持ちをつなぎ止められなくてチャンネルを変えられてしまう可能性も高くなると思っています。僕が作る編集は、終わらないように心がけてました。簡単に言っちゃうと脈絡なくてもいいやん!って編集しちゃうんです。まあ、最初は先輩たちにめちゃくちゃ怒られましたね。日常の会話でも、頭のよい人ってすべての会話をひとつの軸に編集する。でも普通の人はいろいろと話が飛ぶ。それがリアルなのに。僕なんかは同じ内容をを2回使ったり、脈絡なく飛ばす。収録できれいに撮っていても、わざとガチャガチャにするくらいの勢いです。リアルを逆に作るというか。文脈を作ると終わってしまうから。全ては見続けてもらえるようにってことだけのこだわりでもあります。


ナカムラ
一冊の雑誌には文脈があるんですか?


指出
前はちゃんと様式美というものを意識して、ノンブル順に起承転結となるよう並べていた。でも今は、雑誌を隅から隅まで見る時間がなくなったと思う。自分の中でストーリー性にこだわるのをやめた。わざと破綻させている。意識的に、ちょっと引っかかるところを作る。デザインもそうだし、構成も、文章的なものも。読んで終わりではなく、そこから社会に関わってもらえたらと考えているので、ささくれだったところや雑味が必要です。


西田
雑味ね。テレビって男性のスタッフが多いんですよ。あるスタッフが女性の気持ちが分からないといけないと言うんですよ。先輩らは理屈で言うんですよ。ファッション誌とか見ると、どこから見ても分からない。女性スタッフにどう見るのか聞いたら、全員違う。男の感覚では到底理解できないんですよ。だったらテレビもそうしてしまえと。ダウンタウンDXの「スターの私服」は、そんな感覚を活かしたコーナーですよね。番組の中でも、ありえないぐらい素っ気無い作りです。ただただ気持ちのよい音楽を流して(タレントたちが)くるくる回っているだけ。もうちょっと理屈とか。服の出所とか言いたくなってくるけど、説明はしないんです。その説明が余計になってしまうことを考えて素っ気なくしたら、すごいコーナーに成長しちゃったんです。



ナカムラ
文脈や雑味の話ですが、雑誌やテレビはなんとなく見てる方が多いんでしょうか。求人を読む人って、もっと目的を持って見ているので文脈は一つ一つかなり緻密に作っていますね。それをクリックして最後まで読ませるとなると、ぶつ切りだとかなり辛い。すらすらと読めるほうがいい。最後まで読んで、もう終わっちゃったぐらいが理想。そのためには流れが必要なんです。


指出
ナカムラさんの功績は素晴らしい。地域にこんなにいろいろなよい仕事があるけど、それをちゃんと編集して文章にして届けたい人に届けて、なおかつ周辺の興味がある人にも読ませる力がある。メディア本来の役割をしっかりとされていて、新しいジャンルを作られて。若い人たちがなかなか探せなかったものを、ナカムラさんたちが集めてくれて、キュレーションしてくれて、日本の地域にこういう人たちがいるんだなってあらためて気づかせてくれるから、大きなメディアですよね。僕は転職したくて見ているわけじゃないけど、見ていていい会社がいっぱいあるなって思う。僕らの世代でそう思うんだから、若い人たちには自信にもなっていると思う。


西田
確かに昔って、どんな仕事があるか全然わからなかった。顔が全然見えなかった。自分がこの仕事をしているのも、若いときに、どんな仕事があるのか分からなかったからやっているところもある。


ナカムラ
指出さんって、どんな人に向けて雑誌をつくっていますか?全方位に向けている感じじゃないように思います。


指出
向けてないですね。少しずつ農業をやっている若い人たちが応援してくれたりだとか、リノベーションやまちづくりに関わる皆さんがソトコトの雑誌作りに協力してくれたりとか。近いところから少しずつ共同でメディアを作ってくれる人を増やした感じ。


ナカムラ
このやり方は僕も理解できるんですよ。でも西田さんのようにマスに見てもらうことってとても難しい。どうやってやるんですか?


西田
今はそんなに化けなくなりましたけど、昔は一発で化けた。語順を変えてとか、タイトルを変えて輝いていたら翌日の数字の3、4倍は平気で変わるようなシンデレラストーリーがめちゃくちゃあった。若い人たちに言うのですが、ヒット企画なんていうのは完成していないでもいいんだよって。ヒットにはでも匂いがある。当たってから、リファインして半年後とかに完成させればいいんだって。当たる前から、何を完成させているのか、分からないんだよね。芯がしっかりしていれば必ず当たるから、言い方とか順番なんか少々間違っていてもいいんです。後で周りから順番間違っていたよねって言ってくれる。僕が重要視しているのは、完成度ではなく切り口なんですよ。

日本の電波が“微弱”になっている?

ナカムラ
切り口が大切なんですね。今のテレビ業界は以前とどんなところが変わってきていますか?


西田
テレビを積極的に見ようとする人たちの感じが、僕が主戦で戦っていた時より、電波が“微弱”になっている。僕の方法論では、網に引っかからないと思う。だから今思っているのは海外なのですよ。海外は“微弱”じゃないんです。僕の考え方は細やかなコミュニケーションが関係ないから、アジアの視聴者もファーってなる。例えば、人がビリビリってなっていると、海外の人たちはなんだかよく分からないけど見るんですよ。


指出
海外輸出産業になりますよね。


西田
いまの日本のテレビの電波は“微弱”。そこに対して最適化したコンテンツを作ることに最適化されて、番組はこれからも作られるんでしょうね。でも、まだそのビリビリをやったら伝わるところがあるのに、まだやっていないところが海外なんです。海を越えませんか、と。新たな軸上に言葉を超えて乗っかりましょうと。日本クオリティーが持っている展開力は、アジアの人たちには驚きと感動を呼ぶにちがいない。僕はその入り口をやりたいなと。

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指出
実は僕、テレビのおかげで今の仕事をしているんですよ。大学生のときに、「カルトQ」(フジテレビ系)という番組で優勝したんですよ。ルアーフィッシングで。それで山と渓谷社の『Outdoor』編集部が、こいつはおもしろいっていうので雇ってくれた。その後、ルアー雑誌を創刊副編集長として創刊させたりもしました。テレビが持っている影響力というか、僕、その時オンエアを見てなかったんですよ。そうしたら友達から電話がたくさん来たり、ひどかったのは、道場破りというか、会社に匿名で「指出はいるか」と電話をかけてくるんですよ。「指出です」って電話に出ると、いきなりクイズをだされるんですよ。それを答えると「さすが! すげー」って言って電話を切られるんですよ(笑)。そのまま、この仕事に就いているので、ある意味、テレビにつくってもらった編集者ですね。


ナカムラ
テレビって、面白いですね。


西田
皮肉にも、昔ですが、とんねるずの番組の放送中に放送事故になってしまって、画面にお待ちくださいという文字が出たことが。どうなるんだろうって視聴者が思って、視聴率が上がった。なんやねんと、計画的にそういう風にしたらいいのかと。やるのは怖いですけどね。

 営業に移ってから、クライアントさんと話していておもしろい話でしょ、乗っかってくださいって話をするわけですよ。
 大阪でパインアメを作っている「パイン」という会社があるのですが、テレビを使ったことがなくて、何かないかなって相談されて、広告や宣伝をせず、「キングコング」の西野亮廣くんに、ただ配るっていうことをしてもらった。アホなことをしているなって思って、お店でパインアメを見たら手にとってくれる人が増えるかもしれない。その購買に繋がるフローというものを、買ってね、食べてねというところを解体して、今やっているところなんです。テレビの広告の仕事として手間がかかるので、ほかではまだやられていない分野でもあります。実際、パインアメの売り上げジワジワって伸びているんですって。


ナカムラ
いろんなやり方があるんですね。


西田
お二人に話を聞いてきましたが、一緒じゃなくていいんだなってことが聞けてよかったですね。話をしていて、やはり間違っていないと感じました。違った場所でご一緒したいと思いました。


ナカムラ
そうですね。何か接点があるような気がします。popcornも海外に展開していきたいですし。


指出
海外にも興味があるので、一緒にやれたらと思います。ベトナムで日本食のカフェを起業する予定の方がこの前、編集部に来てくれたのですけど、ベトナムは経済が上り調子だそうで、「いまがちょうど日本の80年代くらいですかね」って聞いたら、「まだ日本の60~70年代くらいですね」って。ソーシャルという価値観が日本の2010年代以降のものだとした場合、まだベトナムでは30年くらい先かなと考えたりします。ソーシャルやエコは、なんとなくアジアに親和性の高いジャンルだと思います。メディアの形態は、どんな形でもいいので、動画とかテレビでも、映像でこういう価値観を発信できたらいいと思います。